いつもより開放的に見える人々と、あたり一面にはためく虹色の旗。この日、私は留学先バンクーバーで、人生で初めてのPride Festivalを迎えた。ニューヨークが発端となっているこのプライドパレード。今では世界各国で活発に開催されているが、元々人々や文化の多様性に関心の深かった私も日本ではこのようなパレードには参加したことがなかったため、留学でカナダの大規模なプライド・フェスティバルに参加することは一つの目標であった。そのため、バンクーバー・プライド・ソサイエティがフェスティバル運営のボランティアを募集していると知った際は、迷うことなく応募を決めた。(取材:高橋星乃夏)
ボランティアにはバンクーバー・プライド・ソサイエティ公式ウェブサイトから応募をし、数日後に運営側からメールが届いた。仕事の説明のためのオリエンテーションが対面で行われた。他の予定があり参加できなかった私のようなボランティア参加者には、メールでオリエンテーションの動画が配布された。動画内では、仕事内容の説明以外に、誰かを呼ぶときは代名詞に注意し、なるべく名前で呼ぶようにすること、自分の個性を否定するような言動を受けた際には本部に報告すること、などの内容が含まれており、人々の多様性を尊重した運営ならではのオリエンテーションであると感じた。
そして迎えたプライドパレード当日。集合場所に到着すると、ボランティア参加者用の自由に飲食できるピザやお菓子、飲み物などが用意されていた。これは仕事中でも気軽に食べたり飲んだりしに来ていいスペースだそうで、オリエンテーションでは熱中症対策のために水などを各自持参するよう案内されていたが、このブースで必要なものは十分に揃うような印象であった。(上記写真参照)
そして、ボランティア参加者が着用するTシャツとバケットハットもこのブースで配布された。Tシャツは様々なサイズで用意され、バケットハットは黒と白の2色展開。また、イベント中に首からかける名札は、自分の名前と代名詞を記入する仕様になっており、初対面でもお互いの個性を尊重した呼び方ができるよう工夫されていた。(下記写真参照)
私は、アルコールを提供するバーエリア手前のブースに配置された。身分証明書で年齢を確認し、アルコール購入時に提示するリストバンドを提供した。元々はダンスや歌のステージの運営を手伝うイベントアシスタントのポジションに応募していたが、集合時間になっても来ないボランティア参加者が多くいたため、違うポジションへの配置となった。
リストバンドの提供が始まると、私達のブースは常に長蛇の列ができ、かなり大忙しであった。ルール上、リストバンドの提供前には、全ての人にIDカードなどの身分証明の提示を求める必要があったのだが、「身分証を求められるのなんて40年ぶりだよ!」「18歳以下に見えたみたいで光栄だわ」などと笑いながら身分証を取り出す人も多く、スモールトークに花が咲いた。「Happy Pride!」とお互いに笑顔で声をかけながら現地の方々と会話ができ、留学中の夢が一つ叶ったことを実感した。
シフトは4時間ほどで終わり、帰りに一緒にボランティアに参加した韓国人の友人と、母国とカナダの多様なセクシャリティに対する考え方の違いについて語り合った。韓国でも、ソウルで一年に一回プライドパレードが行われているという。日本でも1994年から開催が始まり、今年も4月に代々木公園にて開催されたが、私は今まで一度も参加したことがなかった。しかし今回のボランティア活動を通して、全てのセクシャリティに属する人々の多くが、自信と笑顔に溢れ、自由に「自分」という人間を表現することでイベントを楽しんでいるような印象を受けた。セクシャリティのあり方に関しては様々な考え方があるが、このようなイベントに参加することで、多様な個性を持つ人々との出会い、自分の知らない価値観や考えを教えてくれる。機会があれば、ぜひ多くの人に参加してみていただきたい。