かなり昔、自分の意志や家族の理由で第二の故郷をカナダと決めて移住。その後新天地でしっかり働き、歳を重ねてシニアになった人々の集まりに出ると、時に「将来的に日本へ帰る?それともここに留まる?」という会話が飛び交うことがある。
当然ながら個々人の現在の生活状況によるのだが、そんな話題に注意深く耳を傾けると、大雑把に言って以下のような人が日本に逆移住するようである。
- 日本に高齢の親や兄弟姉妹がいて、自分以外に面倒を見る人がいない人
- 夫に先立たれたか、又は独身で老後を迎え、近くに身寄り(子供、親戚など)がない人
- 日本に逆移住する諸経費や、日本での再出発に際し経済的に余裕がある人
日本人に人気の移住先カナダ
カナダはアメリカやオーストラリアと並んで、海外移住を考える日本人に人気度が高いのはよく知られている。何を目的に移住したいかによるのは当然だが、カナダの難点はどこもかしこも冬の寒さが厳しい事である。
だが若くて、生活、仕事、子育てなどに手一杯な時は、それも余り苦にならないものだ。まして「老後」などと言うものは他人事で、そんな人生の節目が自分にもいずれ訪れるなど頭の片隅にもなく無我夢中である。
しかしひとたび子供が巣立ち自分もリタイアしてみると、やはり寒さがひと際身に沁みるようになる。と言うことで冬季にはうんざりするほど雨が降るものの、それでも一番気候の温暖なBC州のバンクーバーやビクトリアに居を移す人が多い。これは日本人移住者ばかりではなく、欧州系や東南アジア系の人々にも見受けられる傾向だ。
では独立した子供が、親の移住先に同行するかと言えばそれは稀である。コロナ蔓延を機に働き方の形態が変わり、職種によっては世界の何処ででもリモートワークが出来るなど珍しくなくなった。
だがビクトリアに関していえば、「 Newly Wed, Neary Dead(二人でいるだけで楽しい)結婚したてか、死が間近な老人たち」には魅力的だが、それ以外の人たちにはどうも・・・と言われる街。若者はおろかシニアにも天気以外の文化的なことで引き付ける要素は少ない。
隣の芝生は青い?
ましてや車の運転が出来なくなれば遠出などままならない。翻って日本はと見れば、何処までも電車やバスの公共機関を使って出かけられる1、2泊の温泉旅行、グルメを兼ねた史跡巡り、ハイキングなど等が盛んで、何ともうらやましさがつのる。加えてコンビニでさえ各種のお惣菜がリーズナブルな値段で買える日本。ここではラーメン一杯でも税金や(払いたくもない)チップを入れると$25.00にもなり腹が立つことしきりである。
更にはシニアになって体調が気になりだすと、医療関係が充実しているか否かは大きな問題である。昔日の日々には世界に冠たる医療制度を誇ったカナダだったが、近年は医者不足で人口の5人に一人は係りつけの医者がいないのである。となると故国への郷愁がつのるのは無理ないかと・・・。
移民大国カナダ
イヤイヤそうは言っても負の面ばかりではなく、ゴルフ、テニス、スキー、魚釣りなどの野外スポーツが好きな人には打ってつけ。加えて同性婚、安楽死、大麻の使用さえも国が承認してしまうお国柄である。
また移民には実に寛大で、政府はこの数年、何十万単位で移住させており、2年後の25年には50万人の移民を受け入れ、18年後の41年には人口の29~34%を移民が占めると見込んでいる。
であれば、英語が出来る人のみが来るわけではないであろうから、何年住んでも「RとL」の発音に苦慮する日本人は、言葉の問題をそう心配する必要はないのではと言えるかも知れない。
そんなおおらかな(?)国に魅力を感じてか、最近は日本を捨て一家で移民してくるというニュースを時に耳にする。子供の英語教育の為にと言う人も少なくないようだが、ちょっと気がかりな点がある。
例えば絵が上手だったり、音楽やダンスがうまかったりするのは本人の才能に寄与する面が多い。渡米して数年が経つあの野球界の寵児、大谷翔平選手の例を見るまでもなく、英語(言語)習得も個々の子供の才能によることが多々あることを忘れないで欲しい、と最後に付け加えておこう。