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Tag: 今日から始める自分育て

加藤夕貴 コラム カバーイメージ

第10回 真の願いとコンパッション 〜内なる声と繋がる〜

 こんにちは、心理カウンセラーのゆうきです。前回は、私たちが感じている、感情についての感情も含めた様々な感情は、どこからきているのか?という問いを軸に、私たちの外と内の声について探っていただきました。私たちの中で沸き起こる感情から生まれる知覚があり、それを認めるという認識があります。それらは、私たちが世界や体験をどのように捉えるのかに影響してくるのです。そのような世界や体験の捉え方の中には、私たちが心の奥で本当に願っていること、思うこととは違うものが隠されている可能性があり、そこに光を当てることで、自分の内なる声は何かを探ることができると思っています。  皆さんは、外から学んだ自分や相手に対する期待や価値観、そして判断基準にどのようなものがあったでしょうか?実際に誰か特定の人に言われた言葉もあるかもしれません。またはっきりとした言葉を言われなくても、その場の状況や雰囲気で受け取っているメッセージもあると思います。前回出てきた言葉やメッセージを思い出してみましょう。また前回のワークをした方は、そこで出てきたものと描いた作品をしばらく眺めてみてください。そして下記の問いを巡らせてみましょう。  今、あなたはどんな気持ちですか? そして、どんな言葉をかけたいでしょうか?  思い浮かぶまま、ノートに書き綴ってみてください。また描いた作品を見ながら、その作品に必要だと思う色や形があれば、書き足してみるのも良いと思います。そこに、あなたの内なる声や真の願いのヒントがいっぱい詰まっていると思います。  外からのメッセージと一致感を感じる方もいるかもしれませんし、内なる声は外の声とは違うかもしれません。違った場合は、きっとあなたが本当に望んでいることは、外からのメッセージとは違うもので、なかなかその声を外に出すことができていない事もあるかもしれません。  私の場合、30歳に近づく28歳のころ結婚に焦った時期がありました。転職活動もしていた頃で日本に住んでいました。転職活動中に聞かれた、面接で結婚の予定があるのかという質問に戸惑い、またキャリアの悩みを男性に話すと、結婚を考えていないタイプだと思われる事もありました。2000年代初めに日本社会にいた私は、結婚から程遠く、仕事にも悩んでいた時期でもあり、全てがうまくいっていないような気持ちがして、自分がダメなのではないかと落ち込むことがよくありました。私の当時の内なる声は、私は結婚も仕事もしたい。そして結婚したから仕事をやめるとか、キャリアを考えているから結婚をしたくないとか、そういう事ではない・・という言葉がありました。内なる声と外の声の狭間で葛藤は大きく、自分自身を表現することも、何を望んでいるのかも分からなくなっていました。私の声は徐々に小さくなっていき、自分がダメなのではないかと思ったくらいです。そんな当時の自分を見て、今どんな声をかけてあげたいのかというと「そのままの私でいいよ」という言葉です。当時の私は、そのままの私を認めてもらいたい、という気持ちがあったのです。そしてそれは今もとても大事にしています。  家族療法家のヴァージニア・サティアは、文化も超えて人間誰しもがもつ真の願望を、Yearning と表現しています。そして心の奥にある真の願望と、外に向けて表現する私たち自身との一致が、とても大切だといっています。サティアが挙げているYarningという心の奥にある真の願いは、平和であること、安心したい、理解されたい、そのままを受け入れてもらいたい(受容)、繋がりたい、愛したい・愛されたい、所属したい(居場所)、創造性、希望や目的を持ちたい等・・・  あなたが今、こころの沸き起こる真の願いは?  2024年、皆さんの人生の旅が真の願いから創造される時間となりますように。 “after feeling disconnected for so long, my mind and body are finally coming back to each other- home body” とても長い間  切断されていた 心と体が ようやく お互いに戻ってきた - ホーム・ボディ   By Rupi Kaur ルピ・クーア  from “Home Body.”  セルフコンパッション、自分を抱きしめる 参考: ・Enriching your relationship with yourself and others. Based on the teachings of Virginia    Satir by Sharon Loeschen, LCSW/ ・The Satir Model: Family Therapy and Beyond by Virginia Satir. ・Home Body, Rupi Kaur 

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第9回 人生のテンプレートの探究・2〜外と内の声〜

 こんにちは、心理カウンセラーのゆうきです。前回は、「変化」を起こすために、私たちの奥にある「真の願い」と繋がるために、感情と感情についての感情を見ながら、心の不一致である「ねじれ」について探っていただきました。そこでは例えば、氷山モデルの感情の部分で、怒りがあるにも関わらず、表面的には相手に合わせるような、従属という反応をしたり、また相手に対して理論武装で「抵抗」をしたりと、相手との対話を通して理解し合う、繋がりのコミュニケーションではなく、繋がりの断たれた状態を作ることがよくあります。そのようなとき、怒りに対する感情は、怒りを感じることに対しての「恐れ」や「恥」が、感情についての感情としてあるかもしれません。「恐れ」や「恥」がある場合、対話を通して心の奥で感じている「真の願い」を伝えることができず、願いとはむしろ逆のベクトルへ向かってしまいます。関係性では、それが対立を生んでしまうのです。心の奥の願いと表面に現れた表現が、不一致という「ねじれ」を起こしている状態です。  では、そこで出てきた感情と、またその感情を感じたときに湧き上がる感情は、いったいどこから来ているのでしょうか。今回は、二つ目の外と内の声について探っていきたいと思います。  私たちは生まれてきてから、家族や社会から様々なメッセージを受け取りながら、サティアの心の氷山モデルの、世界を見る目、③見方(視点・信じていること)が形成され、そして④の期待が生まれます。この二つの領域が、私たちの人生の価値観を作り、また人生においての選択肢を広げたり、時に狭めたりしているのです。人生の選択肢を狭めるようなとき、実際は「真の願望」と繋がることを阻む、「ねじれ」をうむ要因となります。  私たちが信じている見方や視点、それによって沸き起こる、自分、他者への期待、また私たちの中で信じている、相手の自分への期待という予測は、本当に自分の心の声から発せられているものなのでしょうか?それを見極めるために、外と内の声を見つめることが必要になってきます。  まず最初に、あなたの人生の中でいつもと違ったことが起きた事柄や関係性で、何か問題が起こっているのなら、それをここでまた思い浮かべ、ジャーナルに書いてみてください。  次に、その時にどのような感情が心の中に沸き起こるのかを探り、またその感情についてみた時に、どんな感情が沸き起こるのか書き出してみましょう(①感情②感情の感情)。感情を良い・悪いで判断せずに、そのままそれを書き出してみましょう。ここはマインドフルネス(その時に沸き起こることをただ単に見つめる)姿勢がとても役に立ちます。それを書き留めてください。  そして関係性に対しての問題、また人生で起こった事や、そこに出てきる感情についてみた時に、あなたが思うこと、それらがどのように見えるか(③視点)そしてその状況や相手にどんな④期待があるかを書き出しましょう。最後にあなたの真の願いをもう一度見直してください。  ここで探求したものの見方、価値観、信じていること、また期待を眺めたときに、その言葉などがどこからきているでしょうか?それはあなたの声なのか、またはどこかで聞いたことのある声でしょうか?  私たちが世界や物事、また相手をみるとき、その景色をどのようにみるかという視点、またそれを判断する価値観や、そこに対する期待は、実は私たちが成長する過程で学んでゆきます。それらは時として、私たちの本音である、心の奥の「真の願い」を応援することもあれば、逆にその願いを阻むものとなり得るのです。その阻むものの声はどこからきているのでしょうか。成長過程で体験した家族との関係性、また親やその他の関係性、学校や地域社会、また大きくは私たちの文化からも影響を受けているのです。  ここで出てきた言葉や文章の中にある声には、あなたに実際に、誰かから言われた言葉はあるでしょうか?また言われなくても、誰かとの関係性の中で感じたメッセージや、社会の中で言われていることと一致するものはありますか?  それらを見つけたら、最後にそれを読んだときに感じる色を一つ、もしくは複数選んで、感じたままに紙の上に自由に描いてみましょう。  次回は、私たちが本当はどんな言葉をかけてもらいたかったか、どんなメッセージが心地よいものとなるのか、外の言葉を癒し、真の願いをサポートする、私たちの内なる声を見つけていきたいと思います。 ~私はいつも強さと自信を自分の外に求めていた。しかしそれは、内からくるもので、いつもそこにあります。~ By アンナ・フロイト 感覚から直感的に出てきた表現(水彩画)。羽たちが、中心にある内なる声に吸い込まれていくようにも見えました。 参考: ・Enriching your relationship with yourself and others. Based on the teachings of Virginia    Satir by Sharon Loeschen, LCSW/ ・The Satir Model: Family Therapy and Beyond by Virginia Satir. ・Quote from Anna Freud https://www.azquotes.com/author/5161-Anna_Freud?p=2S

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第8回 人生のテンプレートの探究・1〜感情を見つめるマインドフルネス〜

 こんにちは、心理カウンセラーのゆうきです。前回は、「変化」を起こすために、私たちの奥にある「真の願い」という、私たちのニーズを探っていただきました。皆さんは、どんなニーズが見つかりましたか?現在の人生は、あなたの「真の願い」に近づいているでしょうか。変化の時期に、ネガティブだと見えるような様々な出来事は、私たちが「真の願い」に気づくように促すものでもあります。しかし、「真の願い」は「抵抗」によって隠されてしまいます。私たちの心の中には、第6回目のコラムでお話しした、抵抗を生み出す人生のテンプレートがあります。「真の願い」は、このテンプレートを通すことで、心の奥で思っていることと外側に表れる言動や行動に不一致というねじれが生まれ、「抵抗」となり、「真の願い」から遠ざかっていくのです  私たちの人生を「真の願い」から作られるものに人生のテンプレートへ変化させるには、表面に現れている私たちの行動・言動を「真の願い」と一致させる必要があります。今回は、この変化を乗り越えてゆく時に大事な、「心の一致」についてお話していきたいと思います。  なぜ私たちはこんなにも「真の願い」から遠ざかってしまうのでしょうか。それを知るヒントは、6回目で探った人生のテンプレートにあります。ヴァージニア・サティが提唱した氷山のモデルの最初の二つ、感情と感情についての感情を探ってみましょう。   この氷山モデルは、6回目でもお話ししたように、自己理解を進める上で役立つ、人生の地図(マップ)となっていきます。その点と点を見ることで、ねじれを起こさず、心の奥の「真の願い」とまっすぐに繋がっているのかどうかを探ることができ、それが、変化をくぐり抜けてゆく過程でとても役に立ちます。その際に、必要なポイントがあります。それが、マインドフルネス・感情を認めることと外と内の声です。  まず一つ目のマインドフルネス・感情を認めることについて探ってみましょう。感情を認めるという事は、人生に起こる出来事、関係性などとの葛藤で沸き起こる感情を、良い・悪いで判断せずに、そのままその感情を認識することです。それにはまず、「抵抗」という反応をする前に、一旦、沸き起こる感情を見つめることが大切です。  私たちは、第5回目でご紹介した「抵抗」という反応が出てきた時に、まずどのような感情が沸き起こるでしょうか。その部分をまずはシンプルに見つめることが、マインドフルな状態といい、マインドフルネスなのです。ここは氷山モデルでいう①の感情のパートです。  今回はこの部分をシンプルに色で探ってみましょう。自分が今「抵抗」をしてしまう出来事や関係性について思い浮かべた時、身体のどこに変化を感じるでしょうか?その感覚をじっくりと感じたら、直感的に合う色を見つけてみてください(1つではないかもしれません)。自由にその色を使って紙の上に表現してみましょう。出来上がったら、その絵から少し離れて観察してください。そこで思い浮かんだ言葉を5つから6つ書き出してみましょう。このように感情を探ってみてください。  次に②の感情についての感情にも注目してみましょう。ここは上記で出てきた感情を持っている自分を見た時に、どのような気持ちになるのか、感情についての感情です。例えば、あなたは怒りや悲しみ、また寂しさを感じていたとします。そんな感情を抱えている自分を見た時に「弱い自分」が想起され、「恥ずかしい」「情けない」という感情が、次に出てくる場合もあります。それが感情についての感情です。  ここをアートで探る場合は、最初の感覚から出てきた絵と言葉をもう一度見つめてみましょう。それを見て、思い浮かび感じた色を選び、さらに絵を描いても良いと思います。絵を描いたら、また同じように言葉を見つけてください。絵を描く前に、様々な思いが出てきた方は、ノートに思いのまま、言葉を綴ってみてください。  最後に、今日のワークを通して思い出したこと、感じたことを振り返ってみて書き出してみてくださいね。次回は、ここからさらに探るための2つ目のポイント外と内の声についてお話しできたらと思います。 〜これは感情を心から取り払うことでも、隠すことでもなく、受け入れる気持ちと一緒に経験することである。〜 By カール・ロジャース アクリル画 最初のレイヤーに①の感情を色と模様で表したもの(赤や黄色、ドット)を、そしてそれを眺めながら沸き起こる感情②を描いたもの(青の部分) 参考: ・Enriching your relationship with yourself and others. Based on the teachings of Virginia    Satir by Sharon Loeschen, LCSW/ ・The Satir Model: Family Therapy and Beyond by Virginia Satir. ・心の探究:心理学者カール・ロジャースによる7つの名言:共感や寛容などについて  https://kokoronotanken.jp/shinrigakusha-kaaru-rojaasu-7tsuno-meigen/

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第7回「真の願い」とエンパワメント

 こんにちは、心理カウンセラーのゆうきです。前回は、私たちが「変化」や「節目」に差し掛かった時期に「抵抗」が出てくる要因となる構造を、私たちの人生のテンプレート(生まれてから構築されるもの)でもある①感情、②感情についての感情、③見方/捉え方、そして④期待から探ってゆきました。今回は、サティア(ヴァージニア・サティア、アメリカ合衆国のソーシャルワーカー、心理療法家)が提唱したアイスバーグ(前回のコラムで紹介)の、さらにその下にある⑤真の願い(満たしたいニーズ)についてお話したいと思います。  誰しも人生をいきる上で、満たされる必要のあるニーズがあります。このニーズや願いは、文化を超えて、どんな人でも持つものです。例えば、優しさが欲しい、理解して欲しいというニーズ。このニーズが満たされるからこそ、私たちは安心して自分自身を自由に表現できますし、それが満たされない時は、悲しみや寂しさなど、様々な感情が沸き起こるのも自然です。  そんな様々な願いやニーズは、誰もが心の奥にあるものの、人はこの真の願いを、意外にも言葉にしないことがあります。その理由は、発達過程で体験する関係性によって、このアイスバーグの上にあるテンプレートが出来上がり、本当の気持ちを表現するよりも先に、自分を守ること、すなわち防衛的な姿勢である「抵抗」が先に出てくる事が多いためです。  サティアは、このアイスバーグの下にある真の願い(満たしたいニーズ)と、アイスバーグの表面に出ている見える部分とが一致すること、すなわち「自己一致」がとても大切だと言っています。「抵抗」は自己一致の妨げになることが多いです。  例えば、家族から批判されたとします。その批判に対して「抵抗」に陥ります。親に対する怒りから、親を逆に批判するかもしれません。また親に言われるがまま、自分はダメなのだと思い、無気力になるかもしれません。このように「抵抗」に陥ってしまうことは、人間ならばとても自然なのですが、そのような状態に陥っている時、このニーズに気がついていないことすらあります。気がつかなければ、この場合でいくと、ただ家族からの批判への抵抗で終わってしまう状況が続きます。そうなると、ますます人生のテンプレートが強まってゆくのです。  では、この状況での「真の願い」はどんなものがあるでしょうか?親に批判されている場合、真の願いの一つに、「理解してほしい」というものがあります。そのほか「愛されたい」「尊重してほしい」もあるかもしれません。私たちの大事なニーズをしっかりと認識することはとても大切です。認識することによって、真の願い、満たしたいニーズを伝えるという選択肢が増えます。「抵抗」以外の方法で相手と繋がる可能性が広がり、それが後に関係性そのものを変えてゆく方向へ導いてくれます。  このように「私は理解されたい」という気持ちを「抵抗」に陥らずに相手に伝える状態そのものが、自己一致のある状態です。それは自分自身の気持ちに気づいている状態であり(1感情から4期待までの自分の内面や思考で起こっていることにもある程度気づいている)、その上で私は真の願いを伝えることを選択したという感覚。自分が自分の人生の舵を取っているという実感を得る第一歩。自分自身をエンパワーする事となるのです。(エンパワメント Wikipediaを参考にしてください)   自分の人生の舵を取るという実感は、他者によって翻弄されているという感覚が低く、自分に力を感じている状態です。この状態は、たとえその時の関係性の中で真の願いが叶わず、ニーズが満たされなかったとしても、心へのダメージやストレスの度合いが、無意識に他者に翻弄されているときと比べれば低くなります。自己一致のある方が、自分へ向けられた自己批判の矢は減少し、また外からの言葉に巻き込まれているという感覚が少ない状態です。  対立の生まれた相手や家族と分かりあう事ができないとしても、それ以外の関係性の中で、理解し合う関係性を構築することができ、人生のテンプレートによる関係性や行動・思考のパターンを繰り返す事も少なくなってゆきます。そこを変化させるためにも、まずは自分の真の願いに気づく為に、自分自身の「抵抗」やアイスバーグを知る事は大切なことで、私たちが誰とどのような関係を結んでいるのかを考える前に、私たちが自分自身とどのように関係しているのかを見つめる事がとても大事になります。今回は、そんな私たちの真の願いやニーズを探ってみてください。  真の願い(ニーズ):理解、評価、つながり、尊重、受容、安心・安全性、創造性、愛、希望、目的etc.. ・今、あなたが一番必要なことは何ですか? ・あなたがあなたのままでいられる事はどのような意味がありますか? ・あなたは自分自身と、どう関係していますか? (自分をどのように尊重していますか、愛していますか?etc..)  この問いをもとに、感じたことを感覚的に絵にしてみても良いでしょう(抽象的な絵でも良いです)。また直感的に思いつくまま、出てきたことをノートに書き出してみても良いと思います。  あなたにとって一番大切な心の奥に、光があたりますように。 参考:Enriching your relationship with yourself and others. Based on the teachings of Virginia Satir by Sharon Loeschen, LCSW/ The Satir Model: Family Therapy and Beyond by Virginia Satir. ハートを包み込みたい気持ち、安心感

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第6回「抵抗」を超える、私たちの「人生のテンプレート」

 こんにちは、心理カウンセラーのゆうきです。前回は、私たちの中にある「抵抗」について探ってみました。「変化」や「節目」に差し掛かった時期に、抵抗感が生まれ、なかなか先に進めない時があります。私たちは何に反応しているのでしょうか?変化を目の前に、あなたの抵抗や心地悪さの中には、どんなことが隠れているのでしょうか。  まず私たちが、抵抗含めた自己理解を進めるために3つの視点がポイントとなります。それは、自分をどのように受け止め、どのように見て、接するのかという「自分との関係性」。次に、他者/外界をどのように捉え、関係するかという「対人関係」。そして社会(世界)との関係性です。これらは、生まれ育った家族・親子関係、そして家族以外の人間関係や、人生体験から様々な影響を受けながら作られていきます。  例えば、小さい時から自分の意見を言った時に「静かにしなさい」など、意見を言う事そのものを否定されたり、よく思われなかったり、それによって問題になったとします。その場合、自分の意見はあまり言わない方が良い、抑える方が上手くいく、と言うことを周りの言葉や体験から学び、いつしか周りの様子を見て、自分の考えや気持ちを言わなくなるかもしれません。また自分の意見に対してネガティブに捉えるかもしれません、その場合、自分との関係性は、自分自身を尊重しないとう形で関わっているとも言えます。そしてそれは、他者との関係性にも反映されてゆくので、もしかすると自己主張する相手を苦手だなと感じるかもしれませんし、そう言う人を尊重できなくなるかもしれません。またその逆に、自己主張をする人に強い憧れを感じ、尊重ではなく崇拝という関わりになるかもしれません。  特に自分の生まれ育った家庭環境、親子関係からは大きな影響を受けると言われ、この3つの関係性全体が、私たちの人生のテンプレートを構成されています。ではそのテンプレートは一度作られたら一生そのままなのでしょうか?安心してください、答えは「ノー」です。それは人生を通して(親子以外での関係性や様々な体験によって)修正や書き換えはいつでも可能なのであり、この「抵抗」を明らかにすることで、私たちのテンプレートを、自分にとってより心地よいものへアップデートできるチャンスなのです。  今回は、抵抗からアップデートするものを探るために、家族療法の母と呼ばれたヴァージニア・サティアが提唱した氷山のモデル(写真1)を参考にしてみたいと思います。 (写真1) ヴァージニア・サティアが提唱した氷山モデルを参考にした図(対処の仕方・コーピングの部分を、著者が「抵抗」として一部、変更を加えた氷山)     ヴァージニア・サティアは、私たちの体験というのは、様々な階層での体験があると説き、その階層を、行動、感情、視点(見方)、期待、真の願い(切望・ニーズ)そして、本質の自己(セルフ)として、氷山モデルに表しました。海に浮かぶ氷山の一番上、見える部分は、私たちの人生に起きている出来事、物語、私たちの行動です。前回までに探った、人生に起こっていること、問題などを思い出してください。そしてその次が、サティアの言葉では、対処の仕方、コーピングと言い、前回で探った「抵抗」の部分です。抵抗は氷山の上と下の間ぐらいだとも言われています。  そしてその下にまだ明らかになっていないところ、今回探究するエリアがあります。それらは、①感情、②感情についての感情、③見方/捉え方、そして④期待です。(今日は期待まで探ります)この(写真1)を参考に、実際に自分の氷山を描いてみてみると、とても分かりやすくなると思います。 感情:起こった物事に対する感情 。 感情についての感情:沸き起こる上記の感情についてどう感じるか。 見方(捉え方):世界、相手、また自分自身をどのようにみているか。この見方の背景には、家族や社会で学んだものも含みます 例:人に迷惑をかけてはいけないという価値観。家族(親)、学校(学校)、社会から受けたメッセージはどのようなものなのか? 自分や相手に対してどのようなルールを課していて、そこにはどのような価値観や決めつけ(仮説)があるのか?など。 期待:自分への期待、他人への期待、(自分が想像している)他人の自分への期待。例えば、「〜するべき」という言葉を使っている時に何らかの期待がそこにある可能性があります。  書き終えたら、下記の問いも考えてみてください。 ・抵抗の下に、怒りや悲しみ、恐れや痛みはありますか?またその感情をどのように捉えていますか? ・今まで何が、また誰が、どのように、あなたのものの見方や期待に影響を与えてきたでしょうか? ・あなたの氷山を見たときに、あなたが大事にしたいこと、また変えていきたいことはありますか?   このワークをしている時に湧き上がってきた事、思い出した過去のエピソード含め、気がついたことは書き留めておいてください。その全てが、私たちの自己理解を進める上で役立つ、人生の地図(マップ)の点と点になってゆきます。 “ No one can persuade another to change. Each of us guards a gate of change that can only be opened from the inside.” 「誰も他人を説得して変えさせることはできない。私たち一人ひとりが、内側からしか開くことのできない変化の門を守っているのだ。」Virginia Satir (ヴァージニア・サティア) 参考:Enriching your relationship with yourself and others. Based on the teachings of Virginia Satir by Sharon Loeschen, LCSW 写真(1)ヴァージニア・サティアの氷山モデルや対処の仕方・コーピングを参考に、著者が和訳し、コーピングの部分を「抵抗」として一部、変更や編集を加えた氷山です。またこの記事の「抵抗」の部分をサティアは、非難、下手(服従)、超合理的、紛らしという4つのコーピング・スタイルと言っています。 オリジナルの図

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第5回「変容 」へ向かうために 〜「抵抗」という宝物からのメッセージ〜

 こんにちは、心理カウンセラーのゆうきです。前回は、人生の「変化」や「節目」に焦点を当て、それが私たちにとってどんな意味なのかを円を使ったヴィジュアルアートと、書くこと(ジャーナリング)で探ってみました。変化も節目も、自分の人生を深く見つめ直すキッカケと成熟へ向かうための変容の機会をもたらしてくれます。今回は、その変容をブロックするものに注目してみようと思います。 ブロックに注目する理由としては、変化や節目は、悩むこともあり、時に人生が滞っているようにも見える時もあります。また変わる時期が来ているからこそ、人によっては問題が表面化することもあり、問題が出れば、誰もが居心地が悪くなるでしょう。それが過度なストレスとなる場合、変化への「抵抗」が生まれることは、自分を守る機能が生まれながらに備わっている私たちの身体にとっては、ごく自然な反応です。決して悪いことではありません。実は、このブロックとなる「抵抗」こそが、熟へ向かうスウィートスポット。大きなチャンスが眠っている宝の在処だと心理臨床家のヴァジニア・サティアは言っています。 まずは、前回描いた、あなたにとっての「変化」を探ったアートを見てみてください。その中に、心地悪いもの、あまりみたくないと感じるもの、また落ち込む感覚や緊張、不安、そして疲れなど、モチベーションが上がらないものはありますか? 見つかった方は、それを目の前にした時(体験を思い出した時)、どんな反応があるのか、心と身体に耳を傾けてみてください。そして大きく分けて、下記の5つの抵抗がないかを観察してみてください。( )には、他者や外からくるものに対しての「抵抗」という反応です。ここからスウィートスポットを探ることができます。 「抵抗」5つの反応: 争い (カーッと込み上げる怒り、相手を非難する:あなたは〜〜〜) 見ない (話し合いを避ける、無視、否認) 誤魔化し (過剰なポジティブ思考、誤魔化し・話のすり替え、真剣に取り合わない) 自己卑下 (すぐに謝罪、下手に出る、相手に合わせる) 超理論・超合理化 (感情を排除、全てを理論化して話す)  「抵抗」は一つだけではないかもしれません。この中でも、これを読んでいるときに目に止まった反応を一つ選んでください(もしくは、最近よく出てくる抵抗のパターンに注目してみるのも良いでしょう)。あなたが選んだ「抵抗」を思い出した時、どんな感覚になりますか?呼吸、心臓の速さ、緊張感など、身体の反応にも注目してみてくださいね。感じられたらイメージで探ってみましょう。 イメージを探って絵で表現しててみよう:①まずはイメージしてみましょう。その感覚は、どんな色ですか?感触があるとしたらどんな感触なのか。重さや速度、音色など、五感を使ってイメージしてみてください。②イメージで探ったら、その色の画材を手にとって、画用紙に描き出してください。具体的なイメージでも良いですし、抽象的なものでも構いません(写真にあるような線だけでも、色を塗りつぶしても間違えはなく、なんでもOKです) 注:探っている間、胸がドキドキしたり、身体の一部に緊張を感じたり、呼吸がしにくさを感じた場合には、呼吸に意識を持っていき、一旦深呼吸してくださいね。 線で表したものや、色、形で表現したものも。感覚で描くときは、抽象的なものでもOKですし、思い出した場面を描いてもOKです。  絵を描き終えたら、少し離れたところから見てください。絵を眺めながら思い浮かぶ言葉を、最低5つから6つ、(出てくるだけ)書き出してください。その後、出てきた言葉を使って文章にしてください。最後に、書いた文章を一言で表す言葉を見つけ「タイトル」をつけてください。ワーク終了後は振り返りの時間です。このプロセスで気がついたこと、感じたこと、思ったことなど、ノートに書き止めてください(ジャーナリング)。 ワークの終わりに: 全て終了したら、足がしっかりと地面についているのを感じながら、気持ちがスッキリするまで手足・身体をシェイクオフ(手や足、身体全体からエネルギーを落とす感じで体を動かす)。今日のプロセスをふるい落とし、そこから日常に戻ってくださいね。 変化の流れをブロックする「抵抗」から、どのようなメッセージが出てきましたか?次回はこの抵抗も含む、人生のテンプレートについて、さらに詳しく探っていけたらと思います。 The Universe has your back カードのメッセージから「私は不快感の中でより深い意味と個人的な成長を見つけます。」 参考:Satir’s change model https://www.mbamanagementmodels.com/satirs-change-model/ The Satir Model:Family Therapy and Beyond by Virginia Satir, John Banmen, Jane Gerber, and Maria Gomori (1991). Psychology Today: Defense mechanism https://www.psychologytoday.com/us/basics/defense-mechanisms

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第4回「変化への誘い、私たちをどこへ導いてゆくのか」

 こんにちは、心理カウンセラーのゆうきです。前回では、人生の彩りから感じること、人生の変化や節目の時期を含めて、全体を通してどんな事が見えてくるのかを探ってみました。  人生全体を見ると、人生が変わる時というのは、必ず前触れがあります。例えば、私にとってアメリカへの高校留学は人生の中で大きな変化でした。そして私が留学という行動に移るキッカケとなったのが、日本での中学受験体験とその体験からくる将来への不安でした。そこから自分の将来を深く考えるようになり、何かを変えたいという強い気持ちになったのです。それが留学の決断を後押ししました。  このように変化への前触れは、必ずしも良い事がきっかけになるとは限りません。内から沸き起こる「変えたい」「変わりたい」「変わらなければ・・」という感覚は、あまりよくない事の後が多いのです。しかし、それがあるからこそ「本当にこれでいいのだろうか?」という問いがやってくるのです。「変化」への誘いです。  また人生の節目も、その前後は様々な気持ちが湧き起こります。例えば、結婚という節目は、結婚が決まった時はとても幸せだと感じていても、結婚式に向けてのプロセスの中で不安を感じ、戸惑うこともあります。このような節目の時は、良くも悪くも、いつも以上に心が敏感に動きます。もちろん、節目は「変化」という一つの通過点なので、結婚式が終われば、そこから長く続く結婚生活の中で、また別の形となって私たちを次なる「変化」へと誘うのです。  前回の人生を彩りで表すアートを見れば、生まれた時から今までの色が一色という方は、かなり少ないのではないでしょうか。どのような彩りかは個人差があると思いますが、人それぞれご自身の彩りがあるのだと思います。人生の色が変わる過程で、私たちの心は成熟してゆくのではないでしょうか。  今回のアートエクササイズでは、人生の彩りの中の「変化」や「人生の節目」を、マンダラ(円)アートで探ってみたいと思います。 マンダラの円形は、私たちが内面を探求する際に、その内面に点在する、記憶や感情の断片を、統合へと向かわせるような心理的成長を促してくれると言われています。  まず画用紙を用意し、そこに直径18cmから20cmほどの円を描いてください。そしてあなたが過去の「変化」や「節目」を見返した時、心の中にどんな事が沸き起こるでしょうか。その沸き起こるイメージや象徴するシンボル、形や色を使って、円の中に表現してみましょう。  また現在、「変わらなければ」や「変わりたい」と感じている方や変化真っ只中の方は、今の状況を思った時に、どのような事が心に沸き起こるでしょうか。上記の場合と同じように、円の中に沸き起こるイメージや象徴するシンボルを描いてみましょう。 (写真1)円の中を色だけで表現したもの。円の外には必要なもの、大事なものを書きました。  ここで描くマンダラのアートに正しい描き方はありません。円の中を感じた色で塗ってみても良いですし(写真1)、円の中心から外へ向かう描き方でも、(写真2)また出てきたイメージをシンプルに円の中に描くだけでもO Kです。雑誌を切り取って貼るコラージュでも良いかもしれません。 (写真2)マンダラのように中心から書いてみた円。  描き終えたら、全体をみて、タイトルをつけてみてください。そして最後にその円を見ながら、あなたにとっての「変化」が、どのようなものなのか、何を語ってくれるのかを自由に思い浮かぶまま、それらをノートに書き留めてください。それをジャーナリングと言います。すると、より体験が深まるでしょう。  そしてさらに、そのノートに書いた後で見えてきたこと、変化に必要だと思うことやあなたが大事にしていることを、円の外に書いてみるのも良いと思います。 (写真3)自然の素材を使ってのマンダラアート。秋という移り変わる葉の色から変化を感じることも。 「変化は必然的に起きるものですが、成長は自分の意思によって生まれるものです」  ジョン・マクスウェル 参考図書:Creating Mandalas, for insightful, healing, and self-expression by Susanne F. Fincher.

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第3回「内なる旅が始まる時」

 こんにちは、心理カウンセラーのゆうきです。前回、皆さんは心の旅に出る準備を整えたと思います。今回は、皆さん自身が人生の旅、つまり心の探究へ向かうときについて考えてみたいと思います。  心の探求が始まるきっかけは人それぞれです。変化を敏感に感じ、反応する人もいるかもしれませんが、それも人それぞれです。思いもよらないことが起きて、変わりたくないけど、変わらざるをえない場合も。また時間が経って振り返ってみると「あの時」という変化の節目が見えることもあります。今日はそんな変化のきっかけが人生に起こっているのか、もしくは過去に起こっていたのか見つけてみましょう。  心の探究は変化を誘うような感覚から始まることが多く、例えば、慣れ親しんでいた場所や人から離れなければならなくなる時がそうです。他には、今まで良いと思っていた価値観、普通だと思っていたことに疑問を持ち始めたり、うまくいっていたことが滞ってしまう時も。人によっては、現状に退屈さを覚えたり、または心が生きていない感覚に陥ることもあります。特に人生が停滞している時、上手くいかないことが続く時、ショックな出来事を体験した時には、何かを変えなければ現状を打破できないため、今までの価値観を変えなければいけない場合もあるでしょう。現状に不満がない場合でも、何かに強く惹きつけられる出来事や人に出会い、そこから新たな人生へと導かれることもあります。  さて皆さんは、現在どのようなことが人生に起きているでしょうか。もし最近、違和感や心地悪さ、何らかの疑問を感じているのなら、変化のサインかもしれません。また過去に、慣れ親しんだ場所や人から離れたことはありませんか?例えば、日本を離れてカナダに来た頃を思い出してみると、どのように変化の波が来ていたのか、今振り返ってみると、当時とは違った角度で見ることができるかもしれません。  人生には、成熟へ向かうための節目がいくつかあります。心理学者であるエリクソンが提唱した社会心理発達理論によると、人間のライフサイクルは8つの段階に分けることができ、心と身体の変化と共に、それぞれのライフステージで必要なことを学んでゆくと言われています。また、それぞれのライフステージで先延ばしにした課題がある場合には、その後の人生にも影響してゆくとも言われています。「自分探し」という言葉を聞いたことはありませんか?思春期から20代、30代にかけて、自分の人生を確立するために、自分探しを始める人もいれば、中年期になると、一度はこれで良いと思っていたはずなのに、立ち止まってもう一度自分を見つめ直す時期があり、これは「ミッドライフクライシス(中年の危機)」と言われます。  今回は、それぞれの人生を振り返ってみて、過去にどんな節目があったのか、また今、人生のどの位置にいるのかをアートで振り返ってみたいと思います。自分の人生の時間軸を色で表すことによって、人生の全体の印象や、それぞれの変化の時期も浮かび上がってくると思います。  まず紙を一枚用意します。そして紙の一番左は生まれた時として、一番右は「今」という時間軸をイメージしてください。生まれた時から時系列に、人生の節目や印象的な出来事を思い出しながら、その時期がどんな色だったのか、マッチする色を探して今にいたるまでの色を塗ってください。出来上がった人生軸の彩りを見ながら、下記の質問を参考に、気がついたことをジャーナリング(頭の中に浮かんだことや、自分が思ったことなどを紙に書いていくこと。「書く瞑想」)をしてみましょう。 ・全体を眺めてみて、どんなことが心に湧き起こりますか? ・色の変化を見ながら何を思い出しますか? ・付け加えたい色、または未完成だと感じる色はありますか? ・全体を眺めながら感じること、そしてこれからの人生をどのような色に彩ってゆきたいですか? ・(オプション:もしイメージできるのなら)現在の色をみながら、これから(未来)こうなれば良いなぁという感覚を、色や形、シンボルで表現してみましょう。  全てを見渡した時、今、あなたには何が見えますか? 私の人生の彩りラインのアート:色で人生を振り返った後に、楕円の絵を描きたくなったので描いていたら未来のタネになりました。そこに流れる水と飛び立つ羽を表現したアートを重ねてみたくなりました

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第2回「旅の準備 聖なる心のスペース」

 こんにちは。心理カウンセラーのゆうきです。これから皆さんは、心の旅へと旅立ちます。今日は、そんな心の旅へ向かう準備をしましょう。  皆さんは、旅行へ出かける前に、まずはどんなことをしますか?スーツケースを出し、洋服、洗面用具など旅先で必要になるものを揃えていきますよね。それと同様に、心の旅に出かける前にもちょっとした準備が必要です。心の旅を始めると、どんなことが思い出されて、どんな気持ちになるのかは予測できません。そんな時に大事なのは自分の心と身体のエネルギーを充電できるスペースです。そこはあなただけの聖なるスペースです。今日はそんなスペース作りに取り掛かりましょう。  ます始めにすることは、私たちにとっての「心地よさ」を探すこと。私たちの心と身体は、リラックスすることでエネルギーの回復へ向かいます。そのため、私たちをリラックスへと誘うものはどんな感覚なのか、心地よさとの繋がりを持つことが大切です。あなたにとっての「心地よさ」が、心と身体のケア をしてくれます。その感覚と繋がることで、休息し、エネルギーを蓄えることができるのです。まずはその感覚を明確にしましょう。  最初にゆっくりと呼吸してみてください。次に心地よさを想像した時、どんな色が広がり、どんな音やメロディーが聴こえますか?そして安心できる手触りも探ってください。  私の前には淡いブルーグリーンが広がりました。それは呼吸を深くさせ、時間の流れをゆったりとしてくれます。そこに自然の水の流れの音と小鳥のさえずりがあると心地よいです。また柔らかいふわふわした手触りが気持ちいいなと思いました。イメージで浮かんだものが、実際に家の中にある場合は、手に取って触ったり、音楽を聴いてみたり、また絵に描いてみると、より実感することができるので効果的です。  次に、旅に持っていきたいのはお守りです。それはあなたに寄り添い、守ってくれて、エネルギーを与えてくれます。あなたが大事にしているものや、深い繋がりを感じる人を思い出して見てください。また、過去にエネルギーを感じた場所や守ってもらった体験があれば、思い出してみるもの良いと思います。  私には、16歳で日本を出てから持ち歩いているものが2つあります。それは家族の写真などが入ったお守り袋と、幼稚園の時にもらった羊飼いのイエスの小さな像です。私はクリスチャンではないのですが、この小さな像をもらった時に、なんだか少し大きいお姉さんになったような感覚があったのを覚えています。そして その像はいつも幼稚園が怖いと思っていた私に勇気をくれました。また自然も好きです。木を触った時、大地に守られるような感じになったのも覚えています。実際に体験していなくても、「お守り」という言葉から自由に想像してみても良いでしょう。  旅の準備は、だいたい整ってきました。もうすぐです。最後に、心地よさと繋がりながら、あなたのお守りを心に思い浮かべ、片方の手を胸に、もう片方の手を腹部にそっと当てながら(セルフホールディング by Peter Levine)深呼吸。じっくりと感じてみてください。それを感じきったら、今、あなたの身体はどんな感覚で、どんな気持ちなのかをノートに書き留めておいてくださいね。また、その感覚を表すような画像や自分の大事なアイテムの写真を撮り、携帯の待受にするのもおすすめです。何かあった時に、そのヴィジュアルを見れば、この感覚を思い出しやすくなります。  エネルギーを充電をしたい時、どんな時でも必要であれば、ここは、あなたがいつでも戻ってくることができる聖なる心のスペースです。さぁ準備は整いました。ここから心の旅に出かけましょう。 数年前に小さな箱庭(サンドトレイ)で作った祈りの場のイメージ。皆さんの旅の無事を願って。

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第1回 こころの旅のはじまりに

 初めまして。心理カウンセラーのゆうきです。現在、ブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市を拠点に、個人・カップル・家族の皆さんへ表現アーツを含めた心理療法やワークショップをさせていただいています。  今回スタートするコラム「今日から始める自分育て」は、読者のみなさんがご自身との繋がりを深めることができるようなコラムにと思っています。  誰の人生にも、転機となる出来事が存在します。例えば、このコラムを読んでいる多くの方が、日本ではなく、現在はカナダに住んでいると思います。カナダにくると決めたことは、あなたにとっての人生の転機だったのかもしれません。もちろん、自然な流れで気がついたら自分はここにいた、という方もいらっしゃると思います。カナダに来た理由が、英語を学びたいと思った方、また日本から出たいと思った方、冒険をしてみたかったという方もいると思いますし、好きな人と一緒にいたいと思ってカナダに住んでいるのかもしれません。日本を出た経緯も、今、ここにいる理由も、個人、個人違い、100人いたら100通りの理由と人生が今・ここに存在します。  そのような人生の中で、楽しいことも含め大変なことなど、様々な体験をされてきたと思います。今読んでいる方の中には、現在、何かの壁にぶち当たっている方もいるかもしれません。このように、人生で起こる出来事が、今のあなたの日々を形作り、そして、それが未来へと向かわせているのだと思います。  人生のチャレンジは、自分の心と身体、仕事、学業、子育て、そして人間関係などを通して、私たちの目の前にいろんな形となって現れます。そのチャレンジは、辛い時もあるのですが、何かを教えてくれる強いメッセージでもあり、また変化の前触れだと思っています。  そして目の前に現れた問題に対して、どうにか解決しようと取り組みます。もちろん、これは大事なことです。しかし、自分との繋がりを感じられないまま取り組もうとすると、なかなかその問題を解決できなくなるということも起こり、時間こそは過ぎても、同じことが繰り返されることもよくあります。その場合、自分自身との繋がりを取り戻すことが最初のステップとなるのです。「今・ここ」の自分に気持ちを合わせることから、心の時間の針は、また再び動き出すのです。  毎回のコラムでは、多くの人が通る人生の節目や転機となりうる人生テーマをあげながら、過去を振り返りつつ、今を見つめながら、人生の物語を描いてゆくことができるようにと思っています。過去に様々なチャンレンジを経験した方には今の自分をより理解するヒントに。そして今、そのチャレンジが起きている方には、その課題を乗り越えるヒントに。そしてどんな人も、人生のどの地点にいても、いつもそこから始まる未来の人生物語のヒントとなるように。この始まりの物語が、みなさんの心に様々な音となって響きますように。  今、みなさんは、人生のどの位置にたち、何が見えているでしょうか。 旅のルートや道しるべにも使われたInuksuk (イヌクシュク)このコラムが人生という旅の道しるべとなりますように

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