10月18日、S .U. C. C. E. S. Sにより法律の専門家である森永正雄先生を招いてBC州家族法日本語オンラインワークショップが行われた。本記事ではBC州での離婚の仕方について簡単にまとめた。(*法的なアドバイスを提供するものではないことをご理解の上、質問等は専門家にご連絡ください)
●BC州では3つの方法で離婚が成立する
- 一年以上の別居。BC州ではこれがほとんどの離婚に適用される。
- 家庭内暴力や虐待(経済的虐待も含む)
- 浮気
2と3に関しては、証明するのが難しく、一年別居さえすれば離婚が成立するので、離婚の理由が浮気であれ家庭内暴力であれ、ほとんどの人が1の別居で離婚申請をするのが現状だ。
●別居とは
BC州では、別居する際に、法的な手続きは不要である。Legal Separation たるものは存在せず、夫婦が別々に住み始めた時点で別居となる。この場合、家庭内別居も別居とみなされる。家庭内別居の場合、同じ家で部屋を別々にすることでも別居となる。ポイントは、お互いが口頭で別居を証明できるかどうか、いわばお互いの「認識」が問われる。
●一般的に離婚というと
子供の養育費や親権、また財産分与等を全て片付けないと離婚は成立しないというイメージが強いが、実際のところ、離婚というのは Married というステータスが Divorced になるだけであり、ステータスのことのみを意味する。よって、養育費、生活費等に関しては、離婚の手続き前後、あるいは手続き中に同時進行で進めることができる。
例)カナダ在住の日本人同士のカップル(BC州で生まれた子供あり)が離婚したい場合、日本で離婚手続きをする→カナダの法で「離婚」は認められる→その後、子供の養育費や不動産等の財産分与について、BC州政府の法律で対応することが可能である。
●養育費
養育費には2種類ある。Basic Child Support は、子供と一緒に住んでいる親に対して、住んでいない方の親が支払う費用。この場合、受け取る側(すなわち子供と一緒に住んでいる親)の収入額は、関係ない。日本では、「養育費を支払っている」というと、収入の高い方の親が払うというイメージがあるが、カナダではそうではない。
例)子供が収入$100Kの母親と一緒に住む場合は、母親の収入額に関係なく、(一緒に住んでいない側となる)収入$50Kの父親が母親に養育費を支払わなければならない。
Special Expense は、習い事など余分にかかる養育費のこと。こちらは、両サイドの収入を比べて、その比率に応じて支払うこととなる。
●配偶者の生活費(Spousal Support)
日本でいう慰謝料。こちらの算出法は結婚年月、どれくらい自分のキャリアを犠牲にしてフルタイムで子供の面倒を見たか、健康的必要性を考慮して計算される。
●財産と借金は半々
(例1)夫が結婚する前に$500Kのコンドを購入。$500Kは夫のものとなるが、ここで注意したいのが、結婚後コンドの価格が$800Kになっていた場合だ。差額の$300Kは夫婦の結婚生活の中で築き上げた財とみなされ、$150Kが妻のものとなる。
(例2)夫が結婚後、大学に戻り$100Kの借金があるとする。これは夫が学校に戻りスキルを得ることで就職口を見つけ家族に経済的貢献をするものとみなされる。よって借金は二人のものとなり、妻は$50Kの借金を支払う義務が出てくる。
ただし、結婚する前に、書面で、誰のものかということを明確にしていた場合は免除される。また離婚の際に(例1)妻が$150Kを拒否する(例2)夫が借金は自分で全て支払うなどと書面で書くことで、(例1)の夫は差額を全てキープできる、(例2)の妻は夫の借金を支払う義務はなくなる。
●必須フォーム3点
1)Child Support Form と Spousal Support Form=地方裁判所に出向いて直接もらうことができる。夫婦間円満離婚の場合、Family Justice Counselor に無料で手伝ってもらうことも可能である。
2)Separation Agreement =Family legal Aid of BCのウエブサイトから入手可能なため、自分達で作成することができる。最後にサインする前に、お互い別々の弁護士に見てもらい、納得してから提出すること。
●最後に
✔️離婚にかかる一連の費用は円満離婚で$2000-3000が相場である。
✔️BC州では相手の同意なしで(一方的にでも)離婚の手続きはでき、離婚申請の書類には、Sole Application(片方が離婚したい場合に提出するフォーム)とJoint Application(お互いに同意して離婚する場合のフォーム)の2種類がある。
✔️誰もが、何から始めたらいいのかわからないので、最初のステップとして地方裁判所に行ってフォームをもらい内容を確認することも、次のステップに進むための方法の一つである。ちなみに地方裁判所は、ダウンタウン、ノースバン、リッチモンド、バーナビーなどグレーター・バンクーバーの至るところに点在する。
離婚手続きに関しては、弁護士に相談することが望ましいが、今回のワークショップは無料セルフサービス等についての説明もあり、経済的に弁護士に依頼する余裕がない人にとっても有益であった。