性的暴行などの罪で起訴されているカナダファッション界の大物ピーター・ナイガード氏の裁判が、9月11日から同月20日に延期された。証言者数の変更から、8件の性的暴行の起訴が5件に、また強制監禁容疑も3件から1件に減ったため。これを受けて、ゴールドスタイン裁判官は裁判員の選出を20日まで延期し、休廷とした。
現在82歳のナイガード氏はヘルシンキ生まれのフィンランド系カナダ人。1967年にウィニペグで婦人服ブランド、ナイガードインターナショナルを創立して成功し、カナダ富豪番付にのし上がりアメリカ市場にも進出。1968年ごろから性加害を告発されるが、被害者が証言を拒否したことや金銭的和解などから性的暴行等の容疑が取り下げられてきた。
その後も多くの被害者から告発され、2015年以降はアメリカ、バハマ、カナダで次々に性犯罪、脱税などの捜査が始められた。2020年12月に米国での容疑による犯罪者引き渡し条約に基づきウィニペグで逮捕された。カナダでは2021年に、トロントとウィニペグで性的暴行の容疑で起訴されている。仮釈放が却下されたため、現在はカナダの拘置所に収容されており、今回延期されたトロントでの公判を待っている。ナイガード氏はケベック州でも容疑を受けており、計3州で起訴されている。性的人身売買組織運営などの疑いで告発しているアメリカ当局への引き渡しは、カナダでの裁判後になる見通し。
華やかなファッション界での地位と権力を濫用し、50年以上に渡って犯したナイガード氏の性加害容疑は広範で、被害者数は未成年も含め数百人とも言われている。2020年には損害賠償を求め、50人以上の告発者が集団訴訟をニューヨークで起こしている。
これに対してナイガードは被害の時効などを理由に訴訟の却下を求めている。