第一次世界大戦終了後、105年目を迎えた2023年11月11日、日系カナダ人戦没者追悼会式典がスタンレーパーク日系人戦没者慰霊碑前で執り行われた。前日の嵐のような天候が嘘のように、途中で晴れ間も見えた式典は、ちび太鼓の本間しのぶさんによる太鼓演奏で幕を開けた。その太鼓の音色は、幾多の戦争の間、一般市民と同等の権利を与えられなかったにも関わらず、どんな苦難にも立ち向かい、カナダのために身を捧げた日系人たちの芯の強さを象徴するような気高い力強さで溢れていた。
式典の冒頭、司会のデイビッド岩浅さんは、日系カナダ人に課された戦争中の規制が解かれ、全ての日系カナダ人が市民権を得てから74年が経ったこと、数々の犠牲を払い、戦争で闘った日系カナダ人を敬うとともに、カナダに住む全ての市民に対し、どんな国籍や宗教である人も、カナダを自分の国として選んだ個人はみな、同じ権利を持つべきだと言及した。そしてコミュニティの宝として、戦後存命の2名の日系退役軍人であるフランク・モリツグさん、タック・イリザワさんについても触れた。
「頭を下げ、これまでの多大な犠牲を思い、平和を祈りましょう」という言葉の後、トランペットによる軍奏曲が鳴り響く。そして第一次世界大戦が1918年11月11日午前11時に終了したことに因み、11時から2分間の黙とうが捧げられた。式典の最後には、1920年に建立された慰霊碑に、在バンクーバー日本国総領事館の丸山総領事をはじめ、数々の日系コミュニティ関係者などからの献花が行われた。
その後式典に参加した希望者たちが、それぞれの願いを込め自身の胸にあったポピーをリースに刺す。心に浮かぶのは「感謝、希望、願い」の3つの言葉。自分の国であるカナダやここに住む大切な人々のために闘った日系人退役軍人や、彼らを支えた家族や友人のおかげで、私たち日系人がここにいるという感謝。出生地、目や肌、髪の色、そして信条や言語の違いに関わらず、すべての市民が同じ権利を持ち、生活をしていけるこの国が、更なる多様性を認めこれからも成長していくことへの希望。また現在起こっている戦争で犠牲になっている人々を思い、誰もが安心して暮らせる平和な世界がやってくることへの願い。
これからもカナダで生活する日系人として、カナダのために闘ってきた日系人を誇りに思い、ここで彼らが築き上げてきた歴史を語り継いでいこうと改めて決意した日となった。
(取材、写真 編集部)