留学と聞くと、ワーキングホリデーや大学の学部留学を想像する人も多いが、最近「Coopプログラム(以下、コープ留学)」という新しい種類の留学が話題になっている。カレッジで専門知識を学ぶだけでなく、身につけた知識を定着させるための就労体験もできる留学方法であるが、同じく就労の認められているワーキングホリデー(以下、ワーホリ)との違いと見比べながら、留学生に人気を集めている理由、また、実際にコープ留学をした際に直面する厳しい現実についても紹介していきたい。(取材:高橋星乃夏)
コープ留学の魅力①:専門分野について学べる
最大6ヶ月間、語学学校に通うことのできるワーキングホリデーと違い、コープ留学では将来のキャリアアップに活きる専門分野について英語で学ぶ。コースは、デジタルマーケティング、カスタマーサービス、UI/UXデザイン、ホスピタリティ、ビジネスマネジメント、Web開発など多岐にわたり、期間もさまざま。自分の関心や過去の経験に基づいて広く選択肢を持つことができるのも魅力である。起業家育成や国際貿易など、通うカレッジによっては特殊なコースもある。
コープ留学の魅力②:年齢制限がない
ワーキングホリデーは31歳になるまでの申請と年齢制限があるが、コープ留学にはその制限がなく、必要最低限の英語能力さえ持っていれば何歳でも受講可能。そのため昨今話題の「リスキリング」(新しい業務や技術革新のために必要な知識やスキルを身につけること)の一つとして、年齢や経験を重ねてから活用できるのもコープ留学の魅力の一つ。コース受講に必要とされる英語力はどのコースを希望するかによって異なり、仮に自分の語学力が基準に満たない場合は、ESL(English as a Second Language)を1〜3ヶ月程受講してからコープの座学期間に入ることも可能。
コープ留学の魅力③:学んだ専門分野に関連した就労経験
コープ留学は座学期間と就労期間の二つの期間によって構成される。座学期間では自身の選択した専門分野について学び、就労期間ではその専門分野に関連した仕事を見つけて実務経験を積む。基準以上の成績と、定められた時間の就労を修めることで、学校からディプロマと呼ばれる卒業証明書が発行される。海外で仕事を得ることは簡単ではないが、座学期間で学んだ知識をアウトプットする場を積極的に作り、実績や人脈を構築していくことで、海外就労の経験を積むことができる。
コープ留学の魅力④:外貨を稼ぎながら留学できる
お金を稼げるという観点ではワーキングホリデーと変わりはないが、現地で働き外貨を稼ぎながらカレッジに通うため、留学にかかるトータル費用を抑えることができるのがコープ留学の魅力の一つである。座学期間はアルバイトとして就労することが可能で、就労期間に入ればフルタイムワーカーとして働くことができる。座学期間の授業が行われる時間帯はコースや通うカレッジによって異なるが、アルバイトと学業を両立しているコープ留学生は多い。
コープ留学、本当に将来のキャリアに役立つ経験はできるの?
ここまでコープ留学の魅力について紹介してきたが、実際にコープ留学をした方たちの多くは、カナダでの仕事探しに苦労したり、想像していた留学生活とのギャップを感じるようである。このようなコープ留学生の感じるギャップに関して、「Twinsカナダ留学」を運営する森尚樹さんは次のように語る。
「コープ留学のポジティブな面についてのネット記事を見たり、留学エージェントからの説明を聞く機会は多いです。ですが、実際に留学した後のリアルな情報は中々表には出てきません。そのため、コープ留学に行ったらうまくやれると楽観視している人がとても多いと感じています。ですが、経験や知識が乏しい人を雇用するほど海外の就労環境は甘くはありません。なので、例えば留学前からコープで学ぶことを(日本語で)一通り勉強したり、学ぶ分野の実務経験を日本で蓄えるなど、『健全な危機感』を持った上で、先手で動いていくことが大事です。コープ留学を通して何を学び、経験し、どんなキャリアを歩みたいのか、そのためには何が必要かを明確にしておくことで、留学すること自体を『目的』とするのではなく、将来の自分のキャリアのための『手段』と捉えられる人が、コープを終えて帰国後に自分の理想のキャリアに近づくことができていると考えています。」
ワーキングホリデーが英語力の向上や休暇目的の側面が強いのに対し、コープ留学は、専門知識を身につけ、キャリアチェンジやキャリアアップを目指す人々に向けた留学形態であるようだ。しかし、実際にコープ留学に参加する留学生の中には、留学前に思い描いていた理想的な就労経験や留学生活ができず、ギャップを感じてしまうという実態がある。コープ留学を検討している人は、自分の将来的にありたい姿から逆算し、そのためにはどんなキャリアを歩みたいのか、その過程でコープ留学をどう活用するのか、などのビジョンを明確にしておくことが大切である。
(監修:Twinsカナダ留学)